【創業期の経理】住民税の特別徴収、通知が届いたら何をする?納付方法まで税理士が解説

「市区町村から『特別徴収税額の決定通知書』という分厚い封筒が届いたけど、何をすればいいの?」

創業して初めて従業員(社長自身を含む)に給与を支払う法人にとって、住民税の特別徴収は最初の関門のひとつです。毎年5月になると、各市区町村から会社宛に通知書が届きますが、初めて受け取ると戸惑う書類です。

この記事では、創業間もない法人の経理担当者・社長の方に向けて、住民税の特別徴収について「通知が届いたら具体的に何をすればいいかを、納付方法まで含めて実務目線で解説します。

この記事でわかること

  • 住民税と「特別徴収」の基本的な仕組み
  • 5月に届く決定通知書の見方・確認すべきポイント
  • 給与天引きの開始時期とスケジュール
  • 納付方法(紙の納付書 / eLTAX)の具体的な手順
  • 納期の特例(年2回納付)の活用
  • 創業期によくある疑問・注意点

1. まず押さえる:住民税と「特別徴収」の仕組み

■ 住民税は「前年の所得」にかかる後払いの税金

住民税(市町村民税・道府県民税)は、前年1月1日~12月31日の所得をもとに計算され、翌年の6月から納付が始まります。所得税が「その年の所得」にかかるのと違い、住民税は1年遅れてかかる後払いの税金です。

たとえば2025年の所得に対する住民税は、2026年6月~2027年5月にかけて納付します。

■ 「特別徴収」とは会社が給与から天引きして納める方法

住民税の納め方には2種類あります。

徴収方法内容納付回数
特別徴収会社が毎月の給与から天引きし、従業員に代わって市区町村に納める年12回(毎月)
普通徴収従業員本人が自宅に届く納付書で自分で納める年4回

給与を支払う事業者は、原則として特別徴収(給与天引き)が義務です。「うちは小さい会社だから普通徴収で」という選択は、原則として認められません。役員1人の会社でも、役員報酬を支払っていれば特別徴収の対象です。

2. なぜ通知書が届いたのか?前提となる「給与支払報告書」

5月に決定通知書が届いたということは、その前提として1月31日までに「給与支払報告書」を市区町村へ提出していたはずです。

給与支払報告書とは、前年中に支払った給与の額を、従業員が住む市区町村ごとに報告する書類です。これを受け取った市区町村が住民税額を計算し、その結果を5月に「特別徴収税額の決定通知書」として会社に通知してくる、という流れです。

創業1年目で前年に給与の支払いがなかった場合は、給与支払報告書の提出も決定通知書もありません。初めて通知書が届くのは、給与支払いを開始した翌年の5月になります。

3.【ステップ1】通知書が届いたら確認すること

5月中旬~下旬に、従業員が住む各市区町村から会社宛に通知書が届きます。従業員が複数の市区町村に住んでいる場合、市区町村ごとにバラバラに届く点に注意してください。

■ 届く書類は2種類

  • 特別徴収義務者用(会社用):会社が保管し、納付額の管理に使う
  • 納税義務者用(従業員用):会社から各従業員へ配付する

■ 確認すべきポイント

確認項目ポイント
対象者の氏名・人数在籍している従業員・役員が正しく記載されているか
月割額の合計6月~翌5月の各月の天引き額。年税額と一致しているか
6月だけ金額が違う端数調整のため6月のみ金額が異なるのが通常。誤りではない
退職者が含まれていないかすでに退職した人が載っていたら市区町村へ連絡が必要
納付先・納期限市区町村ごとの納付額と、毎月の納期限(翌月10日)

■ 従業員用通知書を配付する

「納税義務者用」の通知書は、各従業員に配付する義務があります。住宅ローン審査やふるさと納税の控除確認に使われる大切な書類なので、確実に渡してください。なお、近年は会社が希望すればeLTAX経由で電子データとして受け取ることも可能になっています。

4.【ステップ2】給与ソフトへの設定と天引き開始

■ 天引きは6月支給の給与から

決定通知書に記載された月割額を、6月に支給する給与から天引きします。そして翌年5月まで、毎月の給与から住民税を控除し続けます。

時期やること
5月中旬~下旬決定通知書を受領・確認、従業員へ配付
6月支給給与~給与から住民税の天引きを開始
毎月翌月10日天引きした住民税を市区町村へ納付
翌年5月最後の天引き・納付(1年サイクル完了)

■ 給与ソフトへの登録

freeeやマネーフォワードなどの給与計算ソフトを使っている場合、従業員ごとに月割額を登録すれば、毎月の給与計算で自動的に住民税が天引きされるようになります。6月分(端数調整で金額が異なる月)と7月以降分(定額)を分けて登録するのを忘れないようにしましょう。

5.【ステップ3】納付方法 ― 紙の納付書とeLTAX

天引きした住民税は、翌月10日までに市区町村へ納付します(10日が土日祝の場合は翌営業日)。納付方法は大きく2つあります。

■ 方法① 紙の納付書(納入書)で納付

決定通知書と一緒に、市区町村ごとの「納入書」が同封されています(12か月分まとめて送られてくることが多い)。これを使って、以下の窓口で納付します。

  • 金融機関の窓口(銀行・信用金庫・ゆうちょ等)
  • 市区町村の窓口
  • 納入書にバーコードがあれば、コンビニ納付やスマホ決済が可能な自治体も

毎月、納入書に天引きした金額を記入して納付します。少人数の会社で、納付先の市区町村も少ない場合は、この方法でも十分対応できます。※納入書に金額を記載している市区町村もありますので、その場合はそのまま納付してください。

従業員が複数の市区町村に住んでいる場合市区町村ごとに別々の納入書で納付する必要があります。納付先が増えるほど、紙での管理は手間になります。

■ 方法② eLTAX(エルタックス)で電子納付

eLTAX(地方税ポータルシステム)を使えば、パソコンから電子的に納付できます。特に納付先の市区町村が複数ある会社にとっては、こちらが圧倒的に効率的です。

eLTAXの「共通納税システム」を使うメリットは以下のとおりです。

  • 複数の市区町村への納付を一度の操作でまとめて処理できる
  • ダイレクト納付(口座引落)、インターネットバンキング、クレジットカード等に対応
  • 金融機関の窓口に行く必要がない
  • 納付データが記録に残るため、管理がラク

eLTAXの利用には事前の利用者登録が必要です。給与計算ソフト(freee・マネーフォワード等)と連携させれば、給与計算から納付までの流れがスムーズになります。

これから経理体制を整える創業期の会社であれば、最初からeLTAXを導入しておくことをおすすめします。従業員が増えて納付先が増えても対応でき、納付漏れも防ぎやすくなります。当事務所では、eLTAXの初期設定やクラウド給与ソフトとの連携もサポートしています。

6.【活用】納期の特例で「年2回納付」にできる

毎月の納付が負担に感じる小規模な会社のために、納期の特例という制度があります。

従業員が常時10人未満の事業所であれば、市区町村に申請することで、毎月の納付を年2回にまとめることができます。

天引きした分納付期限
6月~11月分12月10日まで
12月~翌5月分翌年6月10日まで

事務負担が大幅に軽くなるため、小規模な会社にはおすすめです。市区町村に「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を提出して申請します。

源泉所得税の納期の特例とは別の申請です。住民税は市区町村ごとに申請が必要な点に注意してください。また、納付は年2回にまとめられますが、給与からの天引き自体は毎月行う必要があります(天引きをためて年2回にするわけではありません)。

7. 創業期によくある疑問

Q1. 役員1人だけの会社でも特別徴収は必要ですか?

はい、役員報酬を支払っていれば特別徴収の対象です。社長1人の会社でも、市区町村から通知書が届けば、給与(役員報酬)から天引きして納付する必要があります。

Q2. 従業員を中途採用しました。前職の住民税はどうなりますか?

前職を退職した従業員は、住民税が「普通徴収」に切り替わっているか、未徴収分が残っている場合があります。本人の希望と前職での処理によって対応が変わるため、「特別徴収への切替申請書」を市区町村に提出して、自社で天引きするよう手続きできます。

Q3. 従業員が退職したら、残りの住民税はどうしますか?

退職時期によって扱いが異なります。1月~4月に退職する場合は、原則として残額を最後の給与から一括徴収します。6月~12月の退職では、本人が普通徴収に切り替えるか、希望すれば一括徴収します。退職者が出たら、市区町村へ「給与所得者異動届出書」の提出が必要です。

Q4. 通知書が届いた金額が間違っている気がします

給与支払報告書の内容に誤りがあったり、従業員のふるさと納税・住宅ローン控除が反映されていなかったりするケースがあります。金額に疑問がある場合は、通知書を発行した市区町村の住民税担当課に問い合わせてください。

Q5. 納付を忘れてしまったらどうなりますか?

納期限を過ぎると延滞金が発生する可能性があります。また、従業員から天引きした住民税を会社が納めないのは「預かったお金を納めていない」状態になるため、確実に納付しましょう。納付忘れを防ぐには、eLTAXのダイレクト納付(口座引落)の設定が有効です。

8. まとめ

住民税の特別徴収は、初めてだと戸惑いますが、流れを一度理解すれば毎年同じサイクルの繰り返しです。

■ この記事のポイント

  • 住民税は前年の所得にかかり、6月から翌5月のサイクルで納付
  • 給与を支払う会社は特別徴収(給与天引き)が原則義務
  • 5月に届く通知書を確認し、6月支給の給与から天引き開始
  • 納付期限は毎月翌月10日。紙の納入書またはeLTAXで納付
  • 納付先が複数あるならeLTAXの共通納税が効率的
  • 従業員10人未満なら納期の特例(年2回納付)が使える

▶ あわせて読みたい(創業サポートシリーズ)

「給与計算や住民税の納付、まるごと任せたい」

当事務所は、給与計算・住民税の特別徴収事務・eLTAX対応まで

freee認定アドバイザーとしてサポートしています。

創業期のバックオフィスでお困りの方は、お気軽にご相談ください。

▶ お問い合わせはこちら

※本記事の内容は2026年5月時点の情報に基づいています。納付方法や手続きの詳細は、お住まい・所在地の市区町村により異なる場合があります。詳細は各市区町村の住民税担当課にご確認ください。

この記事を書いた人

吉岡 博和

ペネトレイト会計事務所 代表税理士