【2026年版】所得税の予定納税が届いたら?仕組み・減額申請・節税のポイントを税理士が解説

「税務署から『予定納税額の通知書』が届いたけど、これって今すぐ払わないとダメ?」

「前年より売上が下がっているのに、同じ金額を払うのは納得できない」

毎年6月中旬になると、個人事業主の方から予定納税についてのご相談が一気に増えます。2026年は特に、基礎控除引き上げなどの税制改正が続いている影響で「予定納税の計算に改正は反映されているの?」という質問も多くいただいています

結論からお伝えすると、予定納税は強制的な税金の前払いですが、要件を満たせば減額申請ができます。ただし、申請には期限があり、これを過ぎると今年は減額できません。

この記事では、所得税の予定納税について、仕組み・計算方法・納付スケジュール・減額申請の手続き・2026年特有の注意点を、税理士の視点でわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 予定納税の基本的な仕組みと対象者
  • 予定納税額の計算方法と納付スケジュール
  • 減額申請の要件・手続き・期限
  • 令和8年度税制改正の影響(基礎控除引き上げ)
  • 支払い方法の選択肢(振替納税・eTax・クレジット等)
  • 払えない場合・忘れた場合の対応

1. 予定納税とは ― 「税金の前払い」の仕組み

予定納税とは、その年の所得税の一部を、確定申告前にあらかじめ前払いする制度です。前年の所得税額をベースに計算され、税務署から「予定納税額の通知書」が郵送で届きます。

■ 対象になる人

予定納税の対象になるのは、前年分の確定申告において「予定納税基準額」が15万円以上だった方です。

個人事業主・フリーランス・不動産オーナーなど、源泉徴収だけで完結しない所得がある方が中心ですが、副業所得が大きい給与所得者にも通知が届くことがあります。

「予定納税基準額」と「申告納税額」は厳密には異なります。予定納税基準額は、前年の課税総所得金額に基づく所得税額から、源泉徴収税額を控除した金額(一定の調整あり)です。詳細な計算式は国税庁の通知書に記載されていますので、ご自身の通知書の金額をご確認ください。

■ なぜこの制度があるのか

予定納税は、納税者・国の双方にとっての仕組みです。

  • 納税者側:確定申告時の一括納付負担を分散できる
  • 国側:税収を年間平準化できる

「前払い」と聞くと損な気がしますが、納める税金の総額は変わりません。確定申告で精算され、払いすぎていれば還付されます。

2. 予定納税額の計算方法と納付スケジュール

■ 計算方法

予定納税額は原則として、「予定納税基準額」の3分の1ずつを2回に分けて納付します。

区分納付額納付期限
第1期分予定納税基準額の1/37月1日〜7月31日
第2期分予定納税基準額の1/311月1日〜12月1日
確定申告年税額-予定納税額翌年3月15日まで

※2026年は11月30日が日曜のため、第2期分の納期限は12月1日(月)になります。

■ 計算例

前年の予定納税基準額が90万円だった場合:

  • 第1期(7月): 30万円を納付
  • 第2期(11月): 30万円を納付
  • 確定申告: 残り30万円(±年税額の差額)を納付または還付

「正確な金額は通知書を確認」が原則です。通知書には予定納税基準額の根拠と納付額が明記されていますので、ご自身で計算する必要はありません。

3. 【2026年特有の論点】基礎控除引き上げと予定納税の関係

近年の税制改正で基礎控除が引き上げられたことに関連して、「予定納税の計算に反映されているのか?」という質問をよくいただきます。ここは混同しやすいので、正確に整理します。

■ 令和7年度改正の基礎控除引き上げは「すでに反映済み」

令和7年度税制改正により、基礎控除が48万円から58万円に引き上げられ(合計所得655万円以下は加算特例あり)、給与所得控除の最低保障額も55万円→65万円に引き上げられました。これらの改正は、原則として令和7年12月1日に施行され、令和7年分(2025年分)以後の所得税について適用されています。

つまり、2026年の予定納税基準額は、基礎控除58万円ベースで計算された令和7年分の確定申告をもとに算出されています令和7年度改正の基礎控除引き上げは、すでに予定納税の金額に織り込まれているということです。「改正が反映されていないのでは?」という心配は不要です。

■ 注意すべきは「令和8年度改正」のさらなる見直し

一方で、令和8年度税制改正による見直し(令和8年分以後に適用される変更)については、予定納税の計算には反映されません。国税庁は減額申請の案内で、「令和8年度税制改正における基礎控除の見直しは、申告納税見積額の計算上、考慮されない。基礎控除の見直しは確定申告の際に考慮され、最終的な年間の所得税額において精算されると明示しています。

整理すると――令和7年度改正(基礎控除58万円等)は令和7年分から適用済みで予定納税にも反映されているのに対し、令和8年度改正のさらなる見直しは令和8年分の確定申告で精算される、という時系列の違いがポイントです。この2つを混同した「予定納税は古い基礎控除で計算されている」という説明は誤りですので注意してください。

■ それでも「払いすぎ」になり得るケース

基礎控除の論点とは別に、予定納税は前年の所得をもとに計算されるため、今年の状況が前年と変われば払いすぎになる可能性があります。次のような方は、後述の減額申請を検討する価値があります。

  • 今年の所得が前年より明らかに少なくなる見込みの方
  • 扶養家族が増えるなど、所得控除が前年より増える見込みの方
  • 多額の医療費が見込まれる方
  • 廃業・休業・事業縮小を予定している方

4. 減額申請の仕組み ― 「払いすぎを取り戻す」手続き

前年と比べて今年の所得が大きく下がる見込み、または扶養家族の増加・医療費の増加などにより、その年6月30日の現況で見積もった年間の申告納税見積額が、通知された予定納税基準額を下回る見込みの場合、予定納税額の減額申請ができます。

■ 減額申請ができる主なケース(国税庁公表)

ケース具体例
廃業・休業・失業事業を廃止した、長期の休業に入った、解雇等で所得が大きく減少
業績不振による所得減少今年の所得が前年より明らかに少なくなる見込み
災害・盗難・横領による損害事業用資産が被害を受けた
所得控除・税額控除の増加扶養家族の増加、医療費の大幅増、住宅ローン控除が新たに適用される、など

国税庁は「令和8年度税制改正における基礎控除の見直しは、減額申請における所得控除額の増加には含まれません」と明示しています。基礎控除の引き上げ自体を理由に減額申請はできない点に注意が必要です。あくまで「業績不振」「扶養家族増」「医療費」などの個別事情で「年税額が予定納税基準額を下回る見込み」であることが要件です。

■ 減額申請の期限(2026年)

対象判定日申請期限
第1期分・第2期分6月30日現在7月15日
第2期分のみ10月31日現在11月16日

申請期限を1日でも過ぎると、原則として今年の減額申請はできなくなります。「申請しようと思っていたのに忘れた」というケースは取り返しがつきません。減額申請を検討する場合は、通知書が届いてすぐに準備を始めるのがポイントです。

■ 「申告納税見積額」は6月30日の現況で計算する

減額申請で最も重要なのが、申告納税見積額の計算です。これは「1〜6月の実績だけの税額」ではなく、その年6月30日時点で判明している事実をもとに、1年分(1〜12月)の所得・所得控除を見積もって計算した年税額を指します(第2期分のみの申請は10月31日の現況)。

よくある誤解として「1〜6月の損益計算書の実績値がそのまま申告納税見積額になる」と思われがちですが、正確には「6月までの実績を土台に、7〜12月分も合理的に見積もって年間ベースで計算する」ものです。たとえば季節変動のある事業で1〜6月がたまたま赤字でも、下半期に回復が見込まれるなら、それも織り込んだ年間見込みで判断します。実績を無視した希望的な見積もりは認められません。

■ 申請の手続き

  1. 国税庁のサイトから予定納税額の減額申請書をダウンロード
    国税庁HP A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続
  2. 6月30日の現況に基づき、1〜6月の実績を土台に7〜12月を見積もって年間の申告納税見積額を計算
  3. 申請書に必要事項を記入(所得・所得控除・税額の見積額)
  4. 計算の根拠資料として6月末までの損益計算書(試算表)などを添付
  5. 所轄税務署にe-Tax、郵送、または持参で提出

業況不振を理由とする場合は、6月末時点の損益計算書(試算表)が見込みの信ぴょう性を裏付ける根拠資料になります。実績の裏付けがないと、税務署に承認されない(または一部承認にとどまる)可能性があります。

申請内容に問題がなければ、税務署から承認・一部承認・却下のいずれかの結果が書面またはe-Taxで通知されます。原則として申請後1か月程度で結果がわかります。

■ 減額申請のメリット・デメリット

減額申請は「やれば必ず得」というものではありません。メリットとデメリットの両方を理解した上で判断しましょう。

メリットデメリット・注意点
手元資金の流出を抑えられ、資金繰りが楽になる申請書・見積計算・根拠資料の準備に手間がかかる
業績が落ちている時に過大な前払いを避けられる承認されない(一部承認・却下可能性もある
減らした資金を事業の運転資金・投資に回せる見積もりが甘いと確定申告時に納税が集中する
廃業・休業時など、不要な納税を回避できる見積額と確定申告が著しく乖離すると説明を求められることがある
第1期で申請すれば第2期分も合わせて減額できる

■ デメリットの中で押さえたい「見積もりの精度」

減額申請で最も注意すべきは、見積もりが甘いと、かえって後で苦しくなるです。減額申請で予定納税を減らした結果、確定申告で「実は所得がそれほど下がっていなかった」となると、確定申告時に多額の納税をまとめて行うことになります。予定納税で分散できたはずの負担が、3月の確定申告に集中してしまうのです。

判断の目安:「今の資金繰りが厳しい」「下半期も業績回復が見込めない」という方は、減額申請を活用して負担を抑えるのが有効です。一方で、所得の減少が一時的・不確実な場合は、無理に減額せず予定納税で負担を平準化しておくほうが、確定申告時に慌てずに済みます。判断に迷う場合は顧問税理士にご相談ください。

5. 納付方法の選択肢

予定納税の納付方法は複数あります。中でも振替納税を設定しておくと、納め忘れを防げて非常に便利です。

納付方法特徴手数料
振替納税登録口座から自動引落。納期限から1か月後に引き落とされるので資金繰りに余裕。最もおすすめ無料
e-Taxダイレクト納付e-Taxから口座振替で納付無料
インターネットバンキングネットバンキングから振込金融機関による
クレジットカード納付国税クレジットカードお支払サイトから決済。ポイントが付くがシステム手数料あり手数料あり
コンビニ納付QRコードまたはバーコード付き納付書で30万円以下無料
スマホ決済アプリPayPay・auPAY等の対応アプリで納付。30万円以下無料
金融機関・税務署窓口納付書を持参して窓口で納付無料

振替納税を設定するメリットは大きいです。納期限は7月31日ですが、振替日は約1か月後です。資金繰りに余裕が生まれ、納め忘れもありません。確定申告書類と一緒に「預貯金口座振替依頼書」を提出するか、e-Taxからオンラインで設定できます。

6. 払い忘れた場合・払えない場合の対応

■ 納期限を過ぎると延滞税がかかる

納期限を過ぎると、納付するまでの期間に応じて延滞税が発生します。延滞税の利率は以下のとおりです(2026年時点の目安)。

  • 納期限の翌日から2か月以内:年2.4%
  • 納期限の翌日から2か月超:年8.7%

「うっかり忘れていた」だけでも延滞税は発生するため、振替納税の設定や予定納税のスケジュール管理は重要です。

■ 一括で払えない場合の対応

予定納税は、確定申告の年税額のように「延納制度」が使えません。ただし、納税が困難な場合は、税務署に相談することで以下のような対応が検討されます。

  • 納税の猶予(国税通則法46条):災害・病気・事業の著しい損失等による猶予制度
  • 換価の猶予:差押え財産の換価を猶予する制度

「絶対に払えない」と判明した時点で、放置せずに税務署または顧問税理士に早めに相談することが大切です。

7. 予定納税の経理処理(個人事業主の方向け)

予定納税を支払った際の仕訳は、「事業主貸」で処理します。所得税は事業の経費にはならず、事業主個人の負担として扱うためです。

■ 仕訳例(7月に30万円を予定納税で支払い)

借方金額貸方金額
事業主貸300,000円普通預金300,000円

freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計を使っている場合、「事業主貸」または「予定納税」「所得税」などの勘定科目で登録します。事業の経費(租税公課)として処理しないように注意してください。

8. よくあるご質問

Q1. 通知書が届かなかったら払わなくていい?

原則として、通知書が届いた人だけが予定納税の対象です。届かなかった場合は、その年は予定納税の必要はありません。

Q2. 振替納税にしたいが、もう間に合う?

予定納税の振替納税には、納期限の少し前までに申請が必要です。第1期分(7月)に間に合わせるには、5〜6月中の設定が望ましいです。第1期分が振替納税にならなかった場合でも、確定申告時に申請すれば、翌年分から自動的に予定納税も振替納税の対象となります。

Q3. 減額申請をしたら税務調査の対象になりやすい?

減額申請をしたこと自体が税務調査の対象になるわけではありません。ただし、申請内容と確定申告の数字が著しく乖離している場合は、説明を求められる可能性があります。「実態に即した見積額」で申請することが大切です。

Q4. 還付加算金とは?

予定納税で払いすぎていた場合、確定申告で還付されます。さらに、納め過ぎていた期間に応じて還付加算金(利息のようなもの)が付くことがあります。ただし金額はごくわずかなことが多いため、これを目当てに減額申請を見送るほどのものではありません。資金繰りが厳しい場合は、迷わず減額申請を検討しましょう。

Q5. 確定申告で還付になる予定だが、予定納税は払う必要がある?

はい。予定納税は通知された時点で納税義務があります。確定申告で還付になることが見込まれる場合は、減額申請を検討するのが現実的です。減額申請せず満額を払うと、還付までキャッシュアウトが続きます。

9. まとめ ― 「待つ」より「動く」が正解

予定納税は、対象になっている方にとっては避けられない手続きですが、「業績不振」「所得控除の増加」などの事情があれば減額申請で負担を抑えられる制度です。重要なのは申請期限を逃さないことと、根拠ある見積額で申請することです。

■ この記事のポイント

  • 予定納税は前年の予定納税基準額が15万円以上の人が対象
  • 原則基準額の1/3ずつを2回(7月・11月)に納付
  • 2026年の予定納税は令和7年度改正の基礎控除58万円が既に反映済み(令和8年度改正の見直しは確定申告で精算)
  • 減額申請は6月30日の現況で年間の申告納税見積額を計算(1〜6月実績+下半期見込み)。第1期分は7/15まで
  • 納付は振替納税が最もおすすめ(資金繰りに余裕・忘れない)
  • 個人事業主の仕訳は「事業主貸」で処理

「今年は前年より大幅に売上が下がりそう」「事業を縮小予定」「医療費が大幅に増えた」――こうしたケースは減額申請の検討余地があります。申請期限(第1期は7/15、第2期は11/16)を逃さないようにしましょう。

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※本記事の内容は2026年6月時点の制度・税制に基づいています。
※減額申請の判断は、個別の所得・控除・業況により異なります。具体的な申請にあたっては、顧問税理士または所轄税務署にご相談ください。

この記事を書いた人

吉岡 博和

ペネトレイト会計事務所 代表税理士