【2026年4月開始】自転車の青切符、反則金は経費にできる?税理士が「損金性」を徹底解説

2026年4月1日から、自転車の交通違反に対する「青切符(交通反則通告制度)」が導入されました。信号無視やながらスマホなど、これまで指導や警告で済んでいた違反に対して、反則金が科される時代に入っています。

そこで気になるのが、税務上の取扱いです。

「営業先回りで使っている自転車で違反した。会社の経費にできる?」
「フードデリバリーの配達員が違反した。会社が負担したら経費?」
「個人事業主が業務中に違反した場合は?」

結論からお伝えすると、自転車の青切符による反則金も、自動車と同じく原則として損金不算入です。ただし、業務中か業務外か、誰が負担するかによって取扱いが分かれるため、実務では注意が必要です。

この記事では、自転車青切符の概要を簡単に整理した上で、反則金の税務上の取扱いを、法人・個人事業主それぞれに分けて税理士が解説します。

この記事でわかること

  • 自転車青切符制度の基本(2026年4月開始)
  • 法人税・所得税における反則金の損金性・必要経費性
  • 業務中・業務外で異なる取扱い
  • 会社が負担した場合の仕訳と申告調整
  • 業務委託(フードデリバリー等)の場合の取扱い
  • 実務上の注意点とよくある誤解

1. 自転車の青切符制度とは(簡単に整理)

これまで自動車・バイクに導入されていた交通反則通告制度(青切符)が、2026年4月1日から自転車にも導入されました。改正道路交通法に基づくもので、対象は16歳以上です。

■ 主な対象行為と反則金の目安

違反行為反則金の目安備考
信号無視6,000円
一時不停止5,000円
右側通行(逆走)6,000円
歩道での通行方法違反6,000円歩行者優先違反等
ながらスマホ(保持・通話)12,000円悪質な場合は赤切符
無灯火5,000円
傘差し運転6,000円片手運転に該当

※反則金は2026年4月時点の目安です。具体的な金額は警察庁の自転車ルールブック等で最新版をご確認ください。

ここで重要なのは、青切符による反則金は「行政罰」として位置づけられている点です。この性質が、税務上の取扱いを決める根拠となります。

2. 【結論】自転車の反則金は損金不算入(経費にならない)

自転車の青切符による反則金は、自動車の反則金と同様に、法人税・所得税の計算上、原則として損金・必要経費になりません

■ 根拠条文・通達

対象根拠内容
法人法人税法第55条第5項第1号
法人税基本通達9-5-12
業務遂行に関連する罰金・科料・過料・交通反則金は損金不算入
個人事業主所得税法第45条第1項第6号罰金・科料(通告処分によるものを含む)・過料は必要経費不算入

■ なぜ損金にならないのか

仮に反則金を損金として認めてしまうと、「反則金を払う → 法人税が減る → 実質的な負担が軽くなる → 罰則の効果が薄れる」という事態になります。これでは違反抑止の目的が達成できません。

そのため、行政罰としての反則金は、罰則の効果を維持するために税務上は損金に算入しないという制度設計になっています。これは自動車であっても自転車であっても、考え方は同じです。

また、役員や従業員に課された反則金を法人が負担する場合についても、「法人の業務遂行に関連する役員等の行為に課された罰金等を法人が負担することは、法人の使用者責任に基づくもの」とされ、法人自体に課された罰金等と同様に損金不算入として扱われます(法人税基本通達9-5-12)。

「業務に必要な移動中に発生したから経費」という理屈は通りません。業務関連性があってもなくても、行政罰である反則金は税務上の経費にならない、というのが大原則です。

3. 法人の場合の取扱い ― 業務中・業務外で大きく変わる

法人が反則金を負担する場合、「業務中の違反か」「業務外の違反か」で税務処理が大きく異なります。

■ ケース① 業務中の違反 ― 損金不算入

たとえば営業先回りや配達中、買い出し中など、業務遂行のために自転車に乗っていた際の違反です。

この場合、会社が反則金を負担しても損金にはなりません会計上は経費として処理しますが、法人税申告書の別表4で加算調整して、課税所得を増やす必要があります。

仕訳例(業務中に従業員が違反、6,000円を会社負担

借方金額貸方金額
租税公課6,000円現金(普通預金)6,000円

申告調整:別表4で「損金計上罰金等」として加算(社外流出)します。会計上は経費でも、税金計算では経費にしない、ということです。

■ ケース② 業務外の違反 ― 役員/従業員の給与扱い

業務とは無関係な、プライベートな利用中の違反を会社が負担した場合は、その負担額がその役員又は使用人に対する「臨時的な給与」として扱われます(法人税基本通達9-5-12)。

つまり「会社が反則金分を従業員に贈与した」とみなされ、本人の所得(給与所得)が増えるため、所得税・住民税の対象になります。源泉徴収の対象でもあります。

仕訳例(業務外の違反を会社が肩代わり、従業員の場合)

借方金額貸方金額
給与6,000円現金(普通預金)6,000円

役員の業務外違反を会社が負担した場合は要注意。役員報酬として扱われますが、定期同額給与に該当しないため、その負担額は損金不算入となります。さらに、本人にも所得税・住民税が課税されるため、二重に不利な処理になります。

■ ケース③ 本人から会社に弁償させる場合 ― 仕訳不要

従業員や役員が反則金を全額自己負担する場合(会社が一時的に立て替えても、後で本人から回収する場合)は、最終的に会社に費用は残らないため、立替・回収の処理だけで完結します。もっとも問題が起きにくいシンプルな処理です。

立替時の仕訳

借方金額貸方金額
立替金6,000円現金6,000円
現金(給与天引き等)6,000円立替金6,000円

4. 個人事業主の場合の取扱い

個人事業主が業務中に自転車で違反した場合も、反則金は必要経費になりません。これは所得税法第45条第1項第6号に明文化されています。

仕訳上は「事業主貸」で処理します。事業用の資金から支払っても、税務上は事業主個人が負担したものとして扱われ、所得計算には影響しない形になります。

仕訳例(個人事業主、業務中に違反)

借方金額貸方金額
事業主貸6,000円現金(普通預金)6,000円

5. 業務委託の場合(フードデリバリー配達員など)

近年、フードデリバリーや軽貨物配送など、自転車を使った業務委託形態が増えています。この場合の取扱いも整理しておきましょう。

■ 配達員(個人)が違反した場合

配達員自身が個人事業主であれば、上記4の取扱いと同じです。本人が反則金を負担し、必要経費にはなりません

■ プラットフォーム企業が配達員の反則金を負担する場合

プラットフォーム企業が配達員(外部の個人事業主)の反則金を負担するケースは、税務上やや複雑です。原則として配達員に対する「外注費」や「給与」とは異なる性質となるため、顧問税理士への個別相談が必要です。実務上は、配達員の責任に帰すべき違反金を会社が負担する合理性に乏しいため、本人負担とするのが基本です。

6. 損金になる「周辺費用」を見落とさない

反則金そのものは損金にならなくても、関連して発生する費用には損金になるものがあります。実務上、見落とされがちなポイントです。

費用の種類損金性備考
反則金そのもの×業務中でも損金不算入
事故による自転車の修理代業務中であれば損金算入可
事故の相手方への見舞金・賠償金故意・重過失でなければ損金算入可
自転車保険の保険料業務用自転車にかける保険は損金算入可
安全講習費用・ヘルメット購入費福利厚生費または消耗品費等で損金算入可

青切符制度の導入を機に、業務で自転車を使う会社は自転車保険への加入やヘルメット支給を検討する価値があります。これらは損金算入できる費用であり、事故リスクを下げる効果もあります。

7. よくある誤解・実務上の注意点

誤解①「業務中だから経費になるはず」

業務中であっても、行政罰である反則金は損金になりません。法人税基本通達9-5-12で明確に否定されています。

誤解②「少額(数千円)だから問題にならない」

金額の大小に関わらず、税務上の取扱いは同じです。むしろ少額だからこそ「うっかり経費に紛れ込ませてしまう」リスクがあります。税務調査で指摘されやすい論点でもあります。

誤解③「自転車の青切符は新しい制度だから取扱いが定まっていない」

制度自体は2026年4月開始ですが、税務上の取扱いは既存の「交通反則金」と同じ枠組みです。法人税法・所得税法・通達の規定がそのまま適用されます。

誤解④「現金で払えば帳簿に載らないから大丈夫」

会社のお金で支払えば、その出金記録が必ず残ります。「経費にしていないから問題ない」と思っても、業務外の違反金を会社が支払えば給与扱いになり源泉徴収漏れとなります。「会社のお金で個人の罰金を払う」こと自体に税務リスクがあります。

8. まとめ

自転車青切符の導入により、これまで自動車・バイクで議論されてきた反則金の損金性が、より幅広い場面で問題になります。営業職、フードデリバリー、配送業、軽作業など、業務で自転車を使う会社は他人事ではありません

■ この記事のポイント

  • 自転車の青切符による反則金は、自動車と同じく原則として損金不算入
  • 業務中の違反 → 経費計上した上で別表4で加算調整
  • 業務外の違反を会社が負担 → 役員報酬または給与扱い(源泉徴収必要)
  • 役員の業務外違反負担は定期同額給与に該当せず損金不算入になる二重ペナルティ
  • 個人事業主の反則金は「事業主貸」で処理(必要経費不可)
  • 反則金そのものは経費にならないが、保険料・ヘルメット代等は損金算入可

反則金は税務上の処理を誤りやすい論点です。「業務中だから」と安易に経費計上すると、税務調査で指摘されるリスクがあります。判断に迷う場合は、顧問税理士にご相談ください。

「うちの会社の場合、どう処理すればいい?」

業務で自転車を使う事業者の方向けに

税務上の取扱いや事故リスク対策まで、当事務所がサポートします。

細かな経費処理や税務調査対策のご相談も歓迎です。

▶ お問い合わせはこちら

この記事を書いた人

吉岡 博和

ペネトレイト会計事務所 代表税理士