「原油高や物価高で利益が削られている」「同業他社もみな苦しいと聞く」——そんなときに知っておきたいのがセーフティネット保証5号です。2026年7月1日、この制度の対象業種が583業種へと大幅に拡大されました(前回4月1日は520業種)。今回は中東情勢の影響を踏まえた臨時の業況調査を加えたうえでの指定で、幅広い業種が対象に加わっています。本記事では、この制度で使える「別枠2.8億円」の保証枠と、認定を受けるための要件・手続きを、税理士の視点でわかりやすく整理します。
1. セーフティネット保証5号とは——「別枠2.8億円」が最大の魅力
セーフティネット保証5号は、全国的に業況が悪化している業種(経済産業大臣が指定する業種)に属し、経営の安定に支障が生じている中小企業を支援するための信用保証制度です。信用保証協会が金融機関からの借入れを保証してくれるため、通常より融資を受けやすくなります。
この制度の最大のポイントは、保証枠が「別枠」で用意されていることです。一般の保証枠(普通保証2億円+無担保保証8千万円=最大2.8億円)とは別に、5号の枠として最大2.8億円(普通保証2億円・無担保保証8千万円)を利用できます。つまり、すでに一般保証枠を使い切っている企業でも、追加の資金調達余地が生まれるということです。
ポイント:既存の借入枠にプラスできる「予備の枠」
「もう保証協会の枠はいっぱいだから借りられない」とあきらめている経営者の方こそ、この別枠が効いてきます。一般枠と5号枠は別々にカウントされるため、要件を満たせば合計で最大5.6億円の保証枠を確保できる計算になります(あくまで枠の上限であり、実際の融資額は審査によります)。
2. 2026年7月、583業種に拡大——あなたの業種は対象か
指定業種は原則として四半期ごと(3か月ごと)に見直されます。2026年7月1日~9月30日の期間は、定例の業況調査に加えて中東情勢の影響に係る臨時の業況調査を踏まえ、583業種が指定されました。前回(4月1日)の520業種から63業種増えており、範囲がかなり広がっています。
自社が対象かどうかは、業種の分類(日本標準産業分類の細分類)で判断します。指定業種の一覧は、下記の中小企業庁ページで最新版が公表されています。

上記は一部です。詳細は下記をクリックしてご覧ください。
セーフティネット保証5号の指定業種(令和8年7月1日~令和8年9月30日)版
実務メモ:判断は「細分類」で。兼業なら要注意
指定業種の判定は日本標準産業分類の細分類(4桁)で行われます。「うちの業界は入っていないだろう」と思っていても、細かい分類では対象になっているケースは少なくありません。複数の事業を営む兼業者の場合は、主たる業種かどうかを問わず、いずれかの事業が指定業種に該当すれば申請できる余地があります。判断に迷ったら専門家にご相談ください。
3. 認定を受けるための3つの要件(イ・ロ・ハ)
指定業種に属していることに加えて、次のイ・ロ・ハのいずれかの要件を満たすと、市区町村長の認定を受けられます。自社の状況に合ったものを選んで申請します。
| 区分 | 要件の内容 | こんな会社向け |
|---|---|---|
| 5号(イ) 売上高要件 | 指定業種の最近3か月間の売上高等が、前年同期比で5%以上減少していること | 売上そのものが落ちている会社 |
| 5号(ロ) 原油高要件 | 製品等原価のうち20%以上を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているのに、製品等価格に十分転嫁できていないこと | 燃料・原材料費の高騰に苦しむ会社 |
| 5号(ハ) 利益率要件 | 指定業種の最近3か月間の売上高営業利益率が、前年同期比で20%以上減少していること | 売上は保っているが利益が圧迫されている会社 |
実務メモ:「売上は落ちていない」会社も(ハ)で狙える
物価高・人件費高の局面では、「売上高は前年並みでも、コスト増で利益だけがごっそり減っている」という会社が非常に多くなっています。売上減少の(イ)だけを見て「うちは該当しない」と判断してしまうと、利益率で見る(ハ)なら通ったはずのチャンスを逃しかねません。損益計算書を前年同期と丁寧に突き合わせることが、認定の可否を分けます。ここは税理士が最もお役に立てるところです。
なお、業歴が1年3か月未満の創業者の方は、前年同期との比較ができないため、最近1か月間の売上高等が直前3か月間の平均と比べて減少しているかなど、別の基準で判定する特例が設けられています。
4. 申請から融資までの流れ
セーフティネット保証5号は、認定を受けてから金融機関・保証協会での手続きに進みます。認定は融資そのものの決定ではない点に注意が必要です。大まかな流れは次のとおりです。
① 金融機関に事前相談する
まず借入れを予定している金融機関に相談します。認定を取っても融資審査は別途行われるため、先に金融機関と話を進めておくとスムーズです。
② 必要書類を準備する
認定申請書、売上高等内訳書、業種確認表のほか、売上や利益率を証明する試算表・決算書などを準備します。要件(イ・ロ・ハ)ごとに様式が異なります。
③ 市区町村長の認定を受ける
本店(事業所)所在地の市区町村へ申請します。窓口申請のほか、GビズIDを取得すれば電子申請(SNポータル)も可能です。
④ 保証協会・金融機関で保証付き融資を申し込む
認定書を添えて、信用保証協会の保証付き融資を申し込みます。ここで正式な審査が行われます。
認定書の有効期限は「30日」——うっかり失効に注意
市区町村長の認定を受けた後、保証申込みが可能な期間は認定日から起算して30日間です。認定を取ったまま金融機関との調整に手間取っていると、期限が過ぎて認定を取り直すことになりかねません。認定申請の前に金融機関へ相談し、段取りを整えてから動くのが鉄則です。
5. まとめ——「まだ枠がある」ことに気づけるかどうか
セーフティネット保証5号は、原油高・物価高・人件費高に苦しむ中小企業にとって、一般の保証枠とは別に最大2.8億円の資金調達余地を生み出せる心強い制度です。2026年7月からは583業種へと対象が広がり、これまで対象外だった業種にもチャンスが広がっています。
一方で、「自社が指定業種か」「イ・ロ・ハのどの要件で申請すべきか」「売上と利益率のどちらで攻めるか」の判断は、決算数値を正確に読み解く力が求められます。認定書の30日ルールもあり、段取りを誤ると使えるはずの制度を取りこぼしかねません。
当事務所は資金調達に強い会計事務所・認定経営革新等支援機関として、セーフティネット保証5号の要件判定から申請書類の作成、金融機関との調整までを一貫してサポートします。「うちも対象になるのか知りたい」という段階のご相談も大歓迎です。
「うちは5号の対象になる?」まずはお気軽にご相談ください
指定業種の該当判定、認定要件のチェック、申請書類の作成まで。大阪・北区(梅田・北新地すぐ)の当事務所が、御社の資金繰りを別枠保証の活用でサポートします。
※本記事は2026年7月時点の情報(令和8年7月1日~9月30日の指定内容)に基づき、一般的な情報提供を目的として作成したものです。指定業種は原則として四半期ごとに改定されます。最新の指定業種一覧および要件の詳細は中小企業庁ホームページでご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。

