「メインバンクの担当者から『金利を少し見直させてください』と言われた。公庫の金利も上がっているのだろうか。必要な資金は、今のうちに借りておくべきなのか……」
こうしたご相談が、この1年でぐっと増えました。
長く続いた超低金利の時代が終わり、日本は「金利のある世界」に戻りつつあります。中小企業の資金調達の柱である日本政策金融公庫(以下、公庫)でも、2026年7月1日付で融資の利率が改定されました。
この記事では、改定後の金利水準を確認したうえで、金利が上がっていく局面で中小企業が借入前にチェックしておきたいポイントを3つに絞って解説します。
この記事のポイント
- 公庫の利率は2026年7月1日付で改定。小規模事業者・個人事業主向け(国民生活事業)の無担保の基準利率は年3.50〜5.20%、中小企業向け(中小企業事業)の基準利率は年2.65〜3.95%の水準です
- 公庫の融資は原則として固定金利。借りた後に世の中の金利が上がっても、返済額は変わりません
- 条件に当てはまれば基準利率より低い「特別利率」が使える制度が多数あります
- 借入の判断は「金利が上がりそうだから」ではなく、資金繰り計画から逆算するのが原則です
公庫の金利はどう決まっているのか
公庫は、国が100%出資する政策金融機関です。民間の銀行だけでは資金が行き届きにくい小規模事業者や創業者を支えることを目的としており、無担保・無保証人でも利用しやすいのが特徴です。
公庫の利率は大きく2種類あります。
基準利率は、いわば公庫の「標準価格」です。融資制度や返済期間、担保の有無によって適用される利率の幅が決まっています。
特別利率は、一定の条件を満たす場合に基準利率から引き下げられる「優遇価格」です。創業して間もない、事業承継に取り組む、設備投資で生産性を高める、賃上げに取り組む——といった政策的に後押ししたい取り組みに対して、段階的に低い利率が用意されています。
そしてこれらの利率は固定ではなく、国債の利回りなど市場金利の動きに合わせて随時改定されます。今回の7月1日付の改定も、その定期的な見直しの一環です。
改定後の金利水準(2026年7月1日現在)
公庫が公表している主な利率は次のとおりです。
| 事業区分 | 担保の有無 | 基準利率(年) |
|---|---|---|
| 国民生活事業(小規模事業者・個人事業主向け) | 無担保 | 3.50〜5.20% |
| 国民生活事業(税務申告2期未了=創業期) | 無担保 | 3.45〜5.15% |
| 国民生活事業 | 有担保 | 2.50〜4.80% |
| 中小企業事業(中小企業向け・長期資金) | — | 2.65〜3.95% |
※実際に適用される利率は、融資制度・返済期間・担保条件などにより異なります。最新の利率は公庫ホームページでご確認ください。
数年前まで国民生活事業の基準利率が2%前後だったことを思えば、水準の切り上がりは明らかです。ただし、視点を変えれば民間金融機関の金利も同じように上昇しており、公庫の相対的な使いやすさは変わっていません。むしろ注目すべきは、次にお話しする「固定金利」という性質です。
金利上昇局面でこそ効く「固定金利」
公庫の融資は、原則として完済まで利率が変わらない固定金利です。
変動金利の借入は、世の中の金利が上がると返済負担も増えます。一方、固定金利で借りた資金は、契約時の利率が最後まで続きます。金利が今後も上がっていくと考えるなら、固定金利で長期の資金を確保しておくことは、将来の資金繰りの「保険」になります。
逆に言えば、金利上昇局面では「後で借りる」ほど条件が悪くなる可能性があります。だからといって不要な借入をするのは本末転倒ですが、いずれ必要になることが見えている資金——設備の更新、人材採用、季節的な仕入資金など——であれば、調達時期を前倒しする検討には十分な合理性があります。
借入前に確認したい3つのこと
1. 手元資金は月商の何か月分あるか
まず自社の現在地の確認です。目安として、手元資金(現預金)が月商の2〜3か月分を下回っているなら、収益が安定していても資金調達を検討する価値があります。資金繰り表を作り、向こう1年の資金の谷がどこに来るかを見える化しましょう。賞与や納税、大口仕入といった「出ていく月」はあらかじめ分かっているはずです。そこに売上入金の遅れが重なったときに耐えられるか——このシミュレーションが借入額を決める出発点になります。融資は「困ってから」では条件が厳しくなります。余裕があるうちに借りるのが鉄則です。
2. 特別利率に該当しないか
公庫には、基準利率より低く借りられる特別利率の制度が数多くあります。創業期である、事業承継・M&Aに取り組む、省エネ・デジタル化の設備投資をする、賃上げ計画がある——こうした取り組みは利率引き下げの対象になり得ます。同じ金額を借りるのでも、使う制度によって支払利息は大きく変わります。 申し込み前に、自社が使える制度を必ず棚卸ししてください。
3. 既存借入とのバランス
新規の借入だけでなく、いま返済中の借入の一覧(借入先・残高・利率・毎月返済額・完済時期)を整理しましょう。返済が重なって毎月のキャッシュアウトが重い場合は、借換や返済期間の見直しで月々の負担を軽くできる可能性があります。金利だけでなく、「毎月いくら返すか」を資金繰りに合わせて設計することが大切です。
「金利1%の差」は総額でいくら違うのか
最後に、金利の差が返済総額にどれくらい効くのか、ざっくりとした目安を見ておきましょう。
たとえば1,000万円を5年(元金均等・毎月返済)で借りる場合、返済期間中の平均残高はおよそ500万円です。利率が1%違えば、支払利息の差は5年間でおよそ25万円。3,000万円を7年で借りれば、1%の差は総額で100万円前後になってきます。
つまり、特別利率の適用を受けられるかどうか、どの制度で申し込むかは、数十万円から百万円単位の差につながる意思決定だということです。「借りられればどこでも同じ」ではありません。申し込みの前に、制度選びと事業計画の作り込みに時間をかける価値は十分にあります。
また、公庫と民間金融機関は競合ではなく併用するものです。公庫からの借入実績を積むことは民間金融機関からの信用にもつながり、将来の協調融資(公庫と民間が同時に融資すること)への道も開けます。資金調達は単発ではなく、数年先を見据えた金融機関との付き合い方の設計として考えていきましょう。
まとめ
- 公庫の金利は7月1日付で改定。金利は「上がっていくもの」を前提に資金計画を立てる時代になりました
- 公庫の固定金利は、金利上昇局面では借り手にとって有利な性質です。必要が見えている資金は調達の前倒しを検討する価値があります
- 借入の判断は金利観だけでなく、資金繰り表・特別利率の活用・既存借入の整理とセットで考えることが、支払利息の節約と資金繰りの安定の両方につながります
当事務所では、創業融資から追加融資、借換の検討まで、資金調達のご相談を数多くお手伝いしています。資金繰り表の作成や事業計画書の作り込み、使える特別利率の洗い出しといった実務も含めてサポートが可能です。「うちはいくら・どの制度で借りるのが良いか」を具体的に検討したい方は、お気軽にご相談ください。
出典
※本コラムは2026年7月時点の情報に基づき作成しています。

