短プラ2.375%。公庫の既存借入は影響なし——金利上昇で増える会社・増えない会社について税理士が解説

「日銀が利上げしたというニュースは見た。ただ、それがうちの借入にいくら効くのかが、正直よくわからない。銀行からは何も言われていないが、放っておいて大丈夫なのだろうか」

金利の話は、ニュースでは大きく報じられる一方、「では自社の返済額はいくら増えるのか」という一番知りたい部分が抜け落ちがちです。

日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%程度から1.00%程度に引き上げることを決定しました。1995年以来、実に31年ぶりの水準です。これを受けて3メガバンクは短期プライムレート(短プラ)の引き上げを発表し、2026年8月3日から新しい水準が適用されています。

この記事では、日銀の利上げが自社の借入金利にどう伝わるのかを整理したうえで、借入残高別に支払利息が年間いくら増えるのかを具体的な金額で示します。あわせて、影響を受ける借入と受けない借入の見分け方、今月中に確認しておきたい実務のポイントを解説します。

📌 この記事のポイント

  • 日銀は2026年6月16日に政策金利を1.00%程度へ引き上げ。3メガバンクの短期プライムレートは2026年8月3日から年2.375%になりました
  • 今回の引き上げ幅(0.25%)だけで、変動金利の借入残高が3,000万円なら年間約7.5万円、1億円なら年間約25万円の支払利息増になります
  • マイナス金利解除前と比べると短プラは約0.9%上昇。残高3,000万円で年間約27万円の負担増が積み上がっている計算です
  • 日本政策金融公庫からの既存の借入は、原則として固定金利のため返済額は変わりません。影響を受けるのは民間金融機関の変動金利融資と、変動型の保証付き融資です
  • 短プラが上がっても、自社の借入金利がすぐ変わるとは限りません。多くの契約では一定の基準日で見直され、実際の適用は数か月後です

1. そもそも、日銀の利上げはどう自社に伝わるのか

「政策金利」と「自社の借入金利」の間には、いくつかの段階があります。ここを押さえておくと、ニュースを自社の話として読めるようになります。

このうち、中小企業に直接効いてくるのが3段階目の短期プライムレートです。

短期プライムレートとは、銀行が最も信用力の高い企業に1年以内の短期で融資する際に適用する、いわば「銀行の基準価格」です。中小企業向けの貸出は、この短プラに一定の上乗せ幅(スプレッド)を加えて金利を決める仕組みが広く使われています。「短プラ+1.0%」といった形です。

交渉の結果ではなく、契約に基づいて「自動的に」上がる 短プラが0.25%上がれば、それに連動する借入の金利も原則として0.25%上がります。銀行と交渉した結果として上がるのではなく、契約に基づいて自動的に上がるという点が重要です。だからこそ、銀行から特に連絡がなくても、負担は粛々と増えていきます。

2. 短プラは2.375%へ。34年ぶりの水準

3メガバンク(三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行)は、日銀の利上げ決定を受けて短期プライムレートの引き上げを発表し、2026年8月3日から年2.375%を適用しています。三菱UFJ銀行と三井住友銀行にとっては、合併前の旧行時代である1992年8月以来、およそ34年ぶりの高い水準です。

出典:
日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260616a.pdf

三菱UFJ銀行「短期プライムレート」https://www.bk.mufg.jp/ippan/kinri/short_term_primerate.html
三井住友銀行「短期プライムレート」https://www.smbc.co.jp/kojin/kinri/primerate.html
みずほ銀行「短期プライムレート」https://www.mizuhobank.co.jp/rate_fee/rate_sprime.html
(最終確認日:2026年8月5日)

短プラの推移を並べてみると、この2年間の変化がはっきりします。

時期短期プライムレート
2024年8月まで1.475%
2024年9月〜1.625%
2025年3月〜1.875%
2026年2月〜2.125%
2026年8月3日〜2.375%

出典:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/prime.htm

マイナス金利政策が解除される前の水準と比べると、約0.9%の上昇です。1回あたりの引き上げ幅は0.25%と小さく見えますが、積み上がると決して小さくない差になります。

3. 実額でいくら増えるのか

ここが本題です。金利の上昇が、自社の支払利息にいくら効くのか。計算はシンプルで借入残高 × 上昇した金利が年間の増加額です。

変動金利の借入残高今回の利上げ分
(0.25%)
マイナス金利解除前との累計
(約0.9%)
3,000万円約7.5万円約27万円
5,000万円約12.5万円約45万円
1億円約25万円約90万円
3億円約75万円約270万円

※いずれも年間の支払利息の増加額。実際には返済が進んで残高が減るため、残高が維持された場合の目安です。

ポイント:年間27万円は「売上540万円」に相当する

年間27万円という金額を、営業利益率5%の会社が売上で取り戻そうとすると、540万円の追加売上が必要になります。金利の上昇は、それだけの重みを持っているということです。

見落とされやすいのは、これが一度きりではなく毎年続くという点です。日銀の金融政策は物価動向次第でさらに動く可能性があり、「今回の分だけ」ではなく、上昇局面が続く前提で資金計画を組み立てておくことが大切です。

4. 影響を受ける借入・受けない借入

すべての借入が影響を受けるわけではありません。ここを仕分けすることが、対策の出発点になります。

特に押さえていただきたいのが、日本政策金融公庫の融資は原則として完済まで利率が変わらない固定金利だという点です。すでに公庫から借りている資金については、日銀が何度利上げをしても、返済額は契約時のまま変わりません。金利上昇局面において、これは非常に心強い性質です。

💡 実務メモ:守られるのは「既存の借入」だけ

ただし、ひとつだけ注意が必要です。「これから借りる」公庫融資の利率は、市場金利の動きに合わせて改定されています。公庫の利率は2026年7月1日付でも改定されており、水準そのものは切り上がっています。つまり、既存の借入は守られるけれども、新規調達の条件は年々厳しくなっていく——これが今の状況です。「いずれ借りるつもり」の資金があるなら、調達の前倒しも選択肢になります。

出典:日本政策金融公庫「金利情報」https://www.jfc.go.jp/n/rate/

5. すぐに金利が上がるとは限らない、という落とし穴

もうひとつ、実務上の重要なポイントがあります。短プラが8月3日に上がったからといって、自社の借入金利が8月から上がるとは限りません。

短プラ連動型の貸出では、多くの場合「一定の基準日(毎年4月1日と10月1日など)で金利を見直し、その後の一定の返済日の翌日から新しい金利を適用する」といった条項が置かれています。この形であれば、8月3日の短プラ引き上げが実際の返済額に反映されるのは、次の基準日を経た後ということになります。

「気づかないうちに返済額が増えている」リスク

これは「まだ猶予がある」という良い知らせであると同時に、「ある月から突然、返済額が増えている」というリスクでもあります。資金繰り表にこの改定を織り込んでいないと、後になって計画とのズレが生じます。見直しのタイミングや上乗せ幅は金融機関・契約ごとに異なります。自社の金銭消費貸借契約書で「金利の見直し条項」がどうなっているかを、この機会に必ず確認してください。

6. 今月中にやっておきたい3つのこと

① 借入を「固定」と「変動」に仕分けする

まずは現状把握です。借入先・残高・利率・金利タイプ(固定/変動)・毎月返済額・完済時期を一覧にしてください。そのうえで、変動金利の残高を合計し、そこに0.25%を掛ける。それが今回の利上げによる年間の負担増です。

② 契約書で金利の見直しタイミングを確認する

いつから返済額が変わるのかは契約次第です。改定が入る時期がわかれば、資金繰り表のその月以降の数字を今のうちに修正しておきましょう。不明な場合は、金融機関の担当者に「うちの借入は短プラ連動か、次の見直しはいつか」を確認するだけでも十分です。

③ 固定化・借換を検討する

変動金利の残高が大きく、今後も金利上昇が続くと考えるなら、固定金利への切り替えや、固定金利での借換が選択肢になります。公庫の融資を組み合わせて長期・固定の資金を確保しておくのも有効な手段です。

💡 実務メモ:「固定にすれば安心」とは限らない

固定金利は変動金利より当初の利率が高いのが一般的です。「固定にすれば安心」と単純に判断すると、かえって支払利息が増えることもあります。今後の金利観、借入の残存期間、自社の資金繰りの余裕度——これらを総合して判断すべき論点であり、試算をしたうえで決めることをおすすめします。

7. まとめ

📌 本記事のまとめ

  • 日銀の政策金利は2026年6月に1.00%へ。3メガバンクの短期プライムレートは8月3日から年2.375%になりました
  • 変動金利の借入残高3,000万円で年間約7.5万円、マイナス金利解除前との比較では年間約27万円の支払利息増。営業利益率5%なら540万円の売上に相当する重みです
  • 公庫からの既存借入は固定金利のため影響なし。影響を受けるのは民間の変動金利融資と変動型の保証付き融資です
  • 短プラの改定がすぐ返済額に反映されるとは限りません。契約書の金利見直し条項を確認し、資金繰り表に織り込むことが先決です

金利の上昇は、努力ではどうにもならない外部環境の変化です。しかし自社がどれだけ影響を受けるのかを数字で把握し、対策の選択肢を持っておくことはできます何もしないまま負担が積み上がる状態と、把握したうえで固定化や借換を検討している状態とでは、数年後の資金繰りに確かな差が生まれます。

当事務所では、借入の一覧化と金利上昇インパクトの試算、資金繰り表の作成、固定金利への借換や公庫融資の活用といったご相談をお手伝いしています。「うちは結局いくら影響を受けるのか」を具体的に検討したい方は、お気軽にご相談ください。

「うちの借入は、いくら影響を受けるのか」

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※本コラムは2026年8月時点の情報に基づき作成しています。金利水準および制度の内容は変更される場合がありますので、最新の情報は各金融機関にご確認ください。本記事の試算はいずれも一定の前提を置いた概算であり、実際の負担額は借入契約の条件により異なります。

この記事を書いた人

吉岡 博和

ペネトレイト会計事務所 代表税理士