ChatGPTに節税の方法を聞いてみた。会計ソフトのAIが勝手に仕訳をしてくれる。そんな時代に「税理士って、まだ必要なの?」と思ったことはありませんか。
結論から言えば、税理士の必要性はむしろ上がっています。ただし——「AIを使いこなす税理士」に限って、です。
本コラムでは、税務の世界でいまAIに何が起きているのか、AIにできること・できないこと、そして経営者が「AIに強い税理士」と組むと何が変わるのかをお話しします。
1. 衝撃の事実:国税庁は、AIで「調査に行く会社」を選んでいます
まず、多くの経営者がご存じない事実から。
国税庁は令和3年からAIを活用した調査対象の選定を本格導入しています。提出された申告書をAIで分析し、過去の不正や申告漏れのパターンと照合して「申告漏れリスク」をスコア化し、調査先の選定に活用しているのです。その成果も公表されており、令和6事務年度にはAI選定を活用した法人税・消費税の実地調査による追徴税額が3,400億円超に達しました。さらに令和7年夏からは相続税の分野でもAIによる調査選定が全国で本格導入され、2026年9月に稼働する次世代システムKSK2により、この流れは一段と加速します。
つまり、こういうことです。
あなたの会社の申告書は、税務署の職員が読む前に、
まずAIに読まれている。
経費処理の小さな不整合、同業他社と比べた数値の歪み、過去の申告との不自然な変動——人間の調査官なら見落とすかもしれない兆候を、AIは大量のデータから淡々と拾い上げます。
誤解のないように付け加えると、適正に申告している会社にとって、これは怖い話ではありません。AIが「怪しい先」を精密に絞り込むほど、まともな会社が無駄な調査対応に時間を取られる可能性はむしろ下がります。問題は、「AIに分析されても揺らがない、整合性の取れた帳簿と申告」を誰と作るかです。
課税する側がAIで武装しているのに、守る側が紙と電卓のままでいいのか。これが、私たちが「AIに強い税理士」であることにこだわる理由です。
2. 「ChatGPTに聞けばいい」が危険な3つの理由
経営者ご自身がAIに税金のことを聞く——それ自体は素晴らしいことです。私たちもおすすめします。ただし、AIの回答をそのまま実行するのは危険です。理由は3つあります。
① AIは「自信満々に間違える」
生成AIには、事実でないことをもっともらしく答える性質(ハルシネーション)があります。存在しない特例、廃止された制度、要件の取り違え——税務は毎年改正される分野だけに、学習時点の古い情報で答えてしまうリスクが常にあります。
② AIは「あなたの会社の事情」を知らない
税務の答えは、会社の規模・業種・過去の申告・グループ関係・株主構成によって変わります。一般論としては正しい回答が、あなたの会社では誤りになることは珍しくありません。
③ AIは「責任」を取らない
AIの回答どおりに申告して否認されても、追徴課税を払うのはあなたです。税理士は、税理士法に基づく独占業務として税務相談・税務代理を担い、職業上の責任を負って判断します。ここはAIには代替できない、制度上の一線です。
だからこそ必要なのは、「AIか税理士か」ではなく、AIの出力を検証し、御社の個別事情に当てはめて「最終判断」できる税理士です。
3. 当事務所のAI活用:浮いた時間は、すべて「対話と判断」に使う
ペネトレイト会計事務所では、AIを業務の基盤に組み込んでいます。かっこいいスローガンではなく、日々の実務の話です。
記帳・仕訳:AIが分類、人が確認
クラウド会計(freee・マネーフォワード等)とAIを連携させ、過去のパターンと一致する仕訳はAIが自動処理。新規取引やグレーゾーンだけを人間が判断する体制です。これにより月次決算のスピードが大幅に上がり、「先月の数字」ではなく「今月の数字」で経営の話ができます。
調べもの・資料作成:AIが下書き、専門家が仕上げ
法改正のキャッチアップ、報告書や提案書のドラフト作成にもAIを活用しています。重要なのは、最終チェックは必ず税理士が行うこと。AIはあくまで「優秀なスタッフ」であり、判断者ではありません。
セキュリティ:守秘義務を前提にした運用ルール
「AIにうちの情報を入れて大丈夫なのか」——当然のご心配です。実際、前述の業界調査でも、生成AI活用の課題として「データのプライバシーとセキュリティの確保」を挙げた会計事務所が55%と最多であり、多くの事務所がここで足踏みしています。当事務所では、入力してよい情報・してはいけない情報の基準を定め、入力内容がAIの学習に利用されない法人向け環境を前提とするなど、守秘義務を最優先にしたルールのもとでAIを運用しています。「とりあえず無料のAIに何でも入れる」のとは一線を画した、専門家としての使い方です。
業界の現在地:本格活用している事務所は、まだ少数派
ミロク情報サービスの「会計事務所白書」生成AI実態調査(第2弾・2025年公表)によれば、生成AIを使ったことがある会計事務所は39%。しかもその中身を見ると、業務に直結する形で使用しているのは利用経験者の約半数で、残りは「お試し程度」にとどまります。
※少し古いデータになりますので、2026年6月の現時点で想定されること
- 生成AIを使ったことがある会計事務所は8割程度
- ただし生成AIといっても大部分が対話型AI(ChatGPTやGeminiなど)
- エージェント型AIを使ったことがあり、実務でも利用している会計事務所は業界全体の1割未満
エージェント型生成AIを業務で実質的に活用している事務所は、業界全体の1割に満たないのが実態に近いでしょう。エージェント型AIを利用していないことは決して悪いことではありません。しかしながら、お客様目線で考えますと、事務所選びによって受けられるサービスの質とスピードに、すでに大きな差がついているということです。
4. 経営者が「AIに強い税理士」と組むと変わる4つのこと
① 数字が出てくるのが速くなる
記帳の自動化で月次が早く締まる。資金繰りや節税の打ち手は「時間」が命です。決算間際ではなく、期中に手を打てるようになります。
② 質問への回答が速く、深くなる
「この取引、税務上どうなりますか?」への回答が、数日後ではなく当日になる。AIで調査時間を圧縮できる分、回答には判例・裁決まで踏まえた裏付けを添えられます。
③ 税務調査への備えが「AI目線」になる
税務署がAIでリスクをスコア化しているなら、対策も同じ目線で。同業比較で目立つ数値はないか、説明のつかない変動はないか——調査される側の視点だけでなく、選定する側の視点で申告書を点検します。
④ 自社のバックオフィスDXの相談相手になる
「経理を自動化したい」「うちもAIを使いたい」と思ったとき、自ら実践している税理士なら、ツール選定から運用設計まで実体験ベースで伴走できます。当事務所はDXコンサルティングを業務の柱の一つとしており、認定経営革新等支援機関として補助金の活用支援も可能です。
5. 「AIに強い税理士」の見分け方チェックリスト
事務所選び(あるいは今の顧問の評価)に、次の質問をぶつけてみてください。
- クラウド会計(freee/マネーフォワード等)の導入・運用を自ら提案してくれるか
- 月次の数字が出てくるまでの日数を即答できるか
- エージェント型AIを業務でどう使っているか、具体的に答えられるか
- 「AIではここまで、人間の判断はここから」という線引きを語れるか
- 経営者がAIを使うことを歓迎し、使い方を教えてくれるか
5つとも「はい」なら、その事務所はAI時代の良きパートナーです。
実際に当事務所ではお客様に対してエージェント型AIの使い方をお伝えしています。
6. まとめ:AIは税理士を不要にしない。「差」を生むだけ
- 国税庁はすでにAIで調査先を選定する時代。相続税にも導入され、KSK2でさらに加速する。守る側にもAIの目線が必要
- 生成AIは便利だが、ハルシネーション・個別事情・責任の3点で「最終判断」はできない
- エージェント型AIを活用している会計事務所はまだ1割弱。事務所選びで差がつく
- AIが定型業務を担うことで、税理士の価値は「対話と判断」に集中する
AIの進化は、税理士業界にとって脅威ではなくふるいです。そして経営者にとっては、どの税理士と組むかでバックオフィスの生産性が変わる時代の始まりです。
AI×税務のご相談は、ペネトレイト会計事務所へ
当事務所は、AIとクラウド会計を業務基盤に組み込んだ「AIに強い税理士事務所」です。
- 月次決算の早期化・経理の自動化のご相談
- ・クラウド会計(freee・マネーフォワード)の導入支援
- ・AI時代の税務調査対策(申告書のセルフチェック)
- ・「ChatGPTにこう言われたが本当か?」のセカンドオピニオン
「AIの回答が正しいか確認したい」——そんなご相談も大歓迎です。お問い合わせフォームはこちら
※本コラムは2026年6月時点の公表情報に基づき作成しています。KSK2の運用内容・スケジュールは今後変更される可能性があります。

